この記事は、「2011年にリリースされた素敵なドラムンベースまとめ」を書いていて、あの曲を書いていない、ということで補足的に書きました。ただ、その曲だけでも肩入れしても魅力が伝わらない事を防ぐためにも、1年という括りでまとめてみました。
自分が聞いてきた音楽を紹介することでダブステップに対して興味を持つ人が増えてくれたらと思います。紹介する楽曲はドラムンベース同様、クラブ重視でもない、自室にて大音量で聞いて気分が良くなるかだけが判定基準です。
当然好みで書いているため、イギリス・アメリカ現地や日本国内のヒット・流行とも乖離していることをご了承ください。
今年は、Brostepとの軋轢が世界的に表面化した年でした。
日本国内で例えると、トランスにおけるA社の強烈な売り込みでコギャル・ギャル男が大量流入してきて険悪な空気になった時期と非常に似ています。
それまで閉鎖的な空気だったダブステップシーンがRuskoを始めとするアーティストが馬鹿騒ぎ出来るトラックを用意し、単に暴れたいだけの若者が大量に流入しBrostepクラスタを形成、ダブステップシーンを形成してきた人と険悪な関係になっている、という流れです。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=1yxQNAnz06Q[/youtube]
Dodge & Fuski – Python
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=fJrR0pCLy4Q[/youtube]
ダブステップでは客と一体になって盛り上がる瞬間はあれど、楽曲に幅がないため熱いパフォーマンスをするDJというのはなかなか難しいと思います。だからこそ、Ruskoをパフォーマー/オリジネイターとして崇められ、結果はRusko自身によるBrostepを否定するインタビューが出てきたと推測されます。
しかし、この流れはアメリカのロックシーンでは大いに受け入れられていることから来年以降も継続するでしょう。
Xilent – Skyward II (Original Mix)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=UZ2qZ9xmP3U[/youtube]
今年、リスニング系の雄だったXilentがダブステップ楽曲を投入したことは衝撃的な出来事でした。それまではneurofunk楽曲を製作し続けてきたのですが、彼自身の色を保ったまま緻密で壮大なダブステップを提供するとは夢にも思いませんでした。
Nero – Reaching Out
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=sJVQJ4-n_cA[/youtube]
一方でNEROはメジャー路線を行くためか独自路線を歩み、シーンとは距離をおくような楽曲を提供してきた事に少しの寂しさを覚えました。ダブステップのようで、ダブステップではない、斜に構えたその彼らの格好良い姿勢がとうとうリスナーである自分たちに向けられたような気がしています。
これはNEROに限ったことではなく、かつてはPENDULUMでも同じような感覚があり、彼らの成功を祈ることと、こんな個性がない曲がメジャーでないと受けいられないのかという不安が入り混じった感情を今年になってから抱くようになりました。
Modestep – Bite The Hand
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=qX8dGUQ5PRA[/youtube]
Morning Parade – A&E (Millions Like Us Remix)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=vC4LB-qC2Ns[/youtube]
Modestepを代表するような歌物が今までと同じくやはり今年のメインストリームとして据えられた印象があります。というよりはダブステップのアーティストが著名なロックバンドのリミキサーとして起用され、ボーカルトラック=リミックスという大きな流れが今年もまだ継続している印象を受けました。
2011年の段階でもダブステップとはそういう意味ではまだ好奇の目で見られているジャンルのままであったと言えるでしょう。
Korn (ft. Skrillex and Kill The Noise) – Narcissistic Cannibal
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=CUOlc_j4rMA[/youtube]
そういう意味では、アメリカでBrostepの極左的な存在ではSkrillexが爆発した年でもありました。元々ロックアーティストだったSonny MooreことSkrillexが、Kornとタッグを組んでBrostepとしてひとつの完成形を組み上げてしまった、というのが今年のアメリカでの出来事でした。
Turmoil – Sonny Moore (SKRILLEX)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=_rx_Bo5yaxA[/youtube]
Skrillex自体はDubstep/Brostepをアーティストかと考える前に、そもそもロックアーティストでした。どちらかというとUSインダストリアルメタルと言っても差し支えないジャンルでしょう。そういう意味ではロックを聞きに来た観客にダブステップを聴かせるため、Brostepという改造した音楽を提供したことから、アメリカでのダブステップの始まりではないかと思います。
そして、シンセの分厚いリフを聴いたファンが衝撃受けBrostepクラスタを形成し、ダブステップと混同されたことによる軋轢が始まったのではないでしょうか。
Celldweller – “Goodbye (Klayton’s 2012 Remix)”
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=6f7N9gYXfZo[/youtube]
そういうアメリカでは、インダストリアルメタルの雄、CelldwellerがBrostepとインダストリアルメタルを融合させた新しい音を作っていました。音色自体はダブステップでもかなり古いものですが、以前のpropane nightamareのREMIX以上に一歩先を踏むサウンドが提供され、非常にアヴァンギャルドな存在で在り続けていました。
Pendulum – Propane Nightmares [Celldweller remix]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=HtY7Szd7WO4[/youtube]
2008年の時点で、このサウンドを作っていたことからCelldwellerの特異性というのは恐ろしい物があります。個人的な感想を言うと2008年はPendulumの最高潮だったのに、それを1曲で凌駕する恐ろしい存在でした。
一方でイギリスでもBrostepは有ったのかというと、当然存在していました。
Metrik – T-2000
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=M4Q7Bt4lYr4[/youtube]
こちらはドラムンベースでも紹介しましたViper Recordingsによるレイブトラックです。特徴あるサウンドでしたが残念ながら波及はありませんでした。ジャンルだけではなく、このような楽曲で新たなものを産み出そうという動きは多くありました。
次で紹介する楽曲のような新しいジャンルが、UK側のBrostepに対する回答でした。
KOAN SOUND – FUNK BLASTER
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=oPxkN2yUHhk[/youtube]
DCarls – Jump Ft Maksim
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=vUfm-gxCBs8[/youtube]
一つはGlitchhopですね。
BPMを140から100に落とし、ハネたリズムという、PlumpDJsが得意とするような新しい土俵を作る動きがありました。
その音楽性でも最もポップであったのはKoan Soundで、Brostepのロックに対してファンクで迎え撃つという面白い構図でした。まだジャンルとしては未知数ですが、今まで重視されていなかった「リズム感」が2012年以降のダブステップを見る時の面白い切り口となるでしょう。
Datsik – Firepower (Munchi Moombahcore Rmx)
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=AlsOYmvmAfI[/youtube]
Flux Pavilion – Bass Cannon MOOMBAHCORE sMILOdon remix
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=dc0njm6SYEQ[/youtube]
その他はシーンがどこにあるのか分からない、まさに実験中の音楽であるMoombahcoreでしょうか。こちらはreggetonとダブステップの融合を図っているような音で、私自身も全く皆目見当が付かない状況です。glitchhop同様、ダブステップのリズムに対しての何かの思いがあってこその動きだろうと考えられます。そもそも、ダブもドラムンベースもすべてジャマイカンの血が入っているわけでダンスホール/reggetonが融合できない訳がない、と推測ができます。
さて、今年の顔として、話題を掻っ攫って行った曲といえばもちろんFlux Pavillionのコレでしょう。
Flux Pavilion & Doctor P- Louder
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=G1bVyWjnhtM[/youtube]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=6aXHp3yd_uA[/youtube]
ダブステップについて調べた時にこの動画を見た方が多く居たのではないでしょうか。一方でダブステップはパフォーマンスの道具として使われる事が多くありました。ダンスパフォーマンス動画を見るとダブステップが多く使われており、文字通り「ダンス音楽」としての一つの位置付け(音楽の居場所はストリートであり、若者のための音楽)がより明確になりました。
そして、今年最も個人的に素晴らしいと思い、紹介したかった曲がこの楽曲のオリジナルver.です。
DJ Fresh ft Sian Evans – ‘Louder’
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=eE-dwpWpscU[/youtube]
オリジナル楽曲でボーカルが付いている事、既存のダブステップのような重苦しい世界観とは全く違う、日常の延長上にありそうな爽やかなPV、全てが素敵過ぎて2、3日はこればかりを見ていた日もありました。
ダブステップは、ある程度の熟成期に入ったかと思いがちですが、新しく入ってきた人の分だけそれまで人の出入りも多く発生してきて、捉えるにはなかなか難しい動き方をしていた一年と感じています。
残念ながらドラムンベースのようなクロスオーバーというのはなく、外野が面白がってダブステップにちょっかいをしている事が殆どのような感じでした。
私個人として願うことは、ジャンルを新旧分けるのではなく、今年もSkrillexのような他ジャンルの交流や変革を迎える音楽であり続けていて欲しいと思っています。
他にも、多くの名曲がありますが今回はこれらでまとめておきたいと思います。
あなたの音楽ライブラリがより豊かになることを願って。