下町日和

初夏になりそうな日々がしばらく続き、すぐ邪魔するかのように梅雨宣言がニュースで流れた。
3週間も早いという。
土曜日の睡眠不足の朝、通院しようかどうかウダウダと子供のようなワガママが頭の中で暴れている中、支度をして外に出る。
イタズラなのか復讐なのか分からないが、自転車の空気が両方なくなっていた。徒歩で汗ばむ曇り空の下、歩き出す。

今日は初めて四ツ木駅まで、歩いていく。
長楽製パンというキレイな建物に入り、野沢菜パンを買う。
コンビニのおにぎりが随分と吝嗇な状況だということを思い出すような野沢菜の量だった。
パンもふっくらとした食感を食べ歩きながら感じる。

四ツ木駅は完全な住宅街の中に埋もれ込んだ駅なので、商店街どころか飲食店もおぼつかない。
都内なのにこんなにも殺風景な場所ところなんかあるんだろうか、と失礼ながら思ってしまう。


押上の病院で治るのかも分からない治療を受け、パンで刺激された空腹を満たそうと歩き出したが目的が少し遠い。
岩本町までの最短経路というのが思い浮かばない。
迷いながら歩き、言問橋からうんこビルを見る。思った以上に浅草が近いことを知る。
雷門を過ぎ田原町に向かう途中で合羽橋商店街にたどり着く。
前回は去年だったような気がするが、また食器が欲しくなって足向きを変える。

前回は大皿を買ったのだが、重い平皿というのは不便なものだと知る。
そして、中華料理店にあるような取皿がなんとも便利だと知り、毎日使い倒していた。
今回も同じ所が作っている皿を買った。「ロンロンとミュウ」というらしい。
他にも汁気の多い煮物や、缶詰のタイカレーを入れるにはちょうど良さげな大きさの反り鉢も買う。
少しずつ病的なまでに集めていた無印良品のボーンチャイナと入れ替えて行くのに成功している。白すぎる食器は何も食べても美味しくなくなる。


結局合羽橋から上野まで歩いていく。
仏壇屋が軒を連ねているが、あまり繁盛もしていないようにも見える。繁盛しないのに越したことは無いのだが、まだまだ世間はそうもさせてくれない感じだ。
男ビデオの看板がなくなってからどれだけ経ったのだろうか。
看板の近くに風俗嬢と待ち合わせていると思われる中年が何故か大量に立っているので、コロナもまだまだ減らないだろう。


上野から秋葉原、山手線で過ぎる頃にはおろしたての靴では限界も近づいていた。
用事も済まし、すぐに帰宅。
火照るふくらはぎをベランダからの風で冷やしながら昼寝。
夜になってもまだ熱い。帰りしなにサロンパスでも買ってくればよかった。

2021.05.15 / Category : 小噺