ファンから見た逆転裁判4

新シリーズとして個人的に非常に楽しめた作品です。
3までの延長を希望した人が多かった、続編のためにハードルを上げられすぎたためにマイナス評価をされた、というのが所感です。

以下ネタバレアリ。

【全体的な感想】

良い面は新しいアイデアや逆転裁判の可能性を感じることが出来た。
悪い面はとにかく色々と背負いすぎ、詰め込みすぎてて、消化しきれなかった。

【コンセプトについて】

王泥喜圭介、という新しい軸を登場させて、新しい観点から物語を作っていこうという意図は非常に良かったです。
新米の弁護士が独り立ちして、経験を積むという感覚は1に通じるものがあり、そういう意味では懐かしさも感じる良い部分もありました。
例えば「CSIマイアミ」と「CSIニューヨーク」みたいな同じ世界観で色々な奴等がいる、という捉えるような形で受け止めれば非常にいいかも知れません。
その受け止め方で遊んでいたので、ストーリーを通して好意的に受け止められました。

全員や設定すべて「1つずつ伏線を張って、回収していく」という形式のために非常に読みづらくなっていました。
フラグとイベントの間隔が長すぎました。1話ごとに誰かにスポットライトを当てるのではなく、少しずつ素性が分かる流れです。
更に逆転裁判の破天荒な展開が悪い方に作用して、スムーズな展開とは程遠いストーリーになってしまっていました。
構成や人物、陪審員制度という幾つもの新要素が一度に展開されるために交通整理ないし、もっと要素を削っていればもっと楽しめたかも知れません。

【新しい主人公について】

成歩堂龍一の存在でブレさせてしまっていていますが、王泥喜圭介も新しい能力があったりと、新しい可能性を楽しめたのは良かったです。
成歩堂に邪険にされたり美味しいところを持っていかれたりしても、ナニクソと頑張る展開があればもっと感情移入できたかもしれません。
事件が主体であり、人物にもっと注目する要素があれば成歩堂にも負けないキャラとして成立したかも知れません。
個人的には「裁判で負けても真実を炙り出すキャラ」みたいな、絶対勝利ではない部分が出てきて欲しいですね。今までは裁判でも勝つし、真実も割り出すというのが通例でしたので、そういう負けても悔しくない的な部分が読みたいです。

ストーリーを見る限り、成歩堂龍一が出てこなくても良いという風に感じました。
それぐらい無理矢理な絡ませ方、登場の仕方だったのが正直な印象です。
成歩堂については、あの立ち位置は個人的に好きでした。狂言回しで、アレコレとストーリーを展開させるのは良かった。あとはもっとチャチャを入れるだけの役割的に軽い存在だったらもっと良かったですね。前作までの綾里千尋的な感じで、フラッと入ってはボソッと言うような感じで、ファンとしても「千尋的な所まで育っているんだなあ」みたいな感慨深い、重みがあれば7年の歳月も経ってもいいなあという感じで。
ただ、重要な役割を持っているために「だったら王泥喜圭介なんか要らない」みたいな感じになったり、邪魔に思えるほど不必要に絡んできたのがマイナスに思いました。弁護士としての成歩堂が見たいのに、それ意外の顔を見せても今回は魅力的では無かったというか。

【キャラについて】

キャラの厚みが出ていました。
今までは、その分だけ強烈なキャラが多く必要最低限の人しかいなかったのが、関係者を多くすることで逆転裁判の世界が規模が大きいものと感じるようになりました。
特に牙琉弁護士の存在も「正義のヒーローしかいない」という世界観も揺さぶる事ができる、重要な存在でした。立場関係なく狩魔検事のような人間がいるというのは大事だと思います。

一方でキャラ設定の甘い、美男美女が揃ってしまったために会話の起伏が少なく、面白い場面が減ったと感じました。
牙琉兄弟を始めとして、前作よりも多く見た目的に美形のキャラが多く出てきました。こういうのは今までだと怒った時や本性を表した時に三枚目キャラのような性格や言動を出す、というのがお約束でしたが、今回はそのようなお約束がなくなりました。で、そのせいで笑いによるストーリーの起伏が少なかった。
破天荒なストーリーでもキャラに勢いがあったために許される雰囲気が今までありましたが、今回は起伏が少なく笑いが少ない。
牙琉検事は最も個人的には頂けなかった。御剣のような人間的な泥臭い部分が全くないイケメンだった為に、穿った目を養わせるような好きを作ってしまったと気がします。兄のような卑劣さや、獰猛さ、狩魔検事(父親)のような悪魔みたいな性格だったらと惜しい気持ちでした。もしくは、王泥喜をストーカーまがいに追いかけ回す強烈な同性愛者の設定とか。

【ストーリーについて】

1作で大体のキャラの関係性を出す、というのは良かったでした。
前作までの綾里家のような、作品をまたがるような事もなくコンパクトに大体の関係性を提示したのというのは良かったです。
主人公たちが恋愛関係にならないのは、実はこういう事だったのかとか、ヒロインの家族が実は全員登場したというのも非常にインパクトがあり面白かったです。

一方で1つの作品で要素が多すぎ、大量の伏線を回収してない部分も多くありました。
とにかく情報の交通整理が出来てない、挿入部分が多すぎて一回のプレイで全てを把握するのが難しい場面がよくありました。
最後の黒幕の動機も正直も「え、そんな理由でこんなに作品全体に影を落としたの?」という感じで、カタルシスを感じなかったのを始めとして、並奈美波が、実は対抗するヤクザの娘で北来一家を乗っ取ろうとする駆け引きの要素(推測)が無くなってたり、ラーメン屋は結構シリーズ内で取り上げられている割に作品内での扱いが軽かったりと気になる部分が多くありました。

2ちゃんねるでもあったのてすが、
オドロキ&あるまじき関連
黒サイコロック
カタギ組・ミナミタヌキ組
地下マーケットの事件
まこと誘拐未遂
密輸の理由
伝説のギャング・ナラズモ

この辺りの要素が重要な割にスルーされてました。
あとはお馴染みの「硝煙反応(拳銃を撃った人の手首に付く化学物質のチェック)を科学検査しない」もありました。或真敷天斎なんかはこの検査一発で判明するのですが。


新シリーズという事で、肝いりの作品にしようという姿勢があり非常に良かったのですが、要素が多すぎて消化不良を起こしたために残念な部分がとかく目にした作品でした。できる限り1からプレイした方がこの作品を楽しめると思います。

2012.11.14 / Category : 小噺